王座戦のタイトル挑戦権を獲得した藤井聡太竜王・名人の絶妙手・勝負を決めた一手を徹底解説!
豊島将之九段との決勝戦、最終盤までどちらが勝つかわからない白熱した戦いで、将棋史に残る名勝負でした。
観ているだけで汗だくに/冷や汗も出るような緊張感のある一手の連続。
終局後の両者はぐったりした表情で、激戦を物語る様子でした。
71期:王座戦挑戦者決定トーナメント決勝戦
主催: 日本経済新聞社、日本将棋連盟
【最終盤、藤井聡太七冠が勝負を決めた局面を紹介】
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この局面で9八角と角を打ち込んだ一手が勝負を決めました。
他の位置からの角打ちでも良さそうですが、それだと自陣の詰めろが残ってしまい、逆転負けの危険がある状況でした。
そして、この一手に繋がる一連の流れが凄かった。
上記局面の数手前、6五にいた豊島九段の王を狙い「6六歩打」と打ち込みます。
この一手が強烈。
下がると桂馬や龍に狙われてしまい、逃げ道が上記局面のように7六王しか行き場がありません。
将棋AIソフトを使って調べてみると、この局面での最善手はやはりこの一手でした。
この候補手を見ると「他の手は全て逆転される」という状況なのが分かると思います。
「1手間違えたら即逆転」というギリギリの戦いを、お互いに1分将棋で約1時間も続ける終盤戦。
その中で出た最善手でした。
そして、逃げた王を狙い打った9八角打が決め手でした。
(藤井竜王・名人は6六歩の時点で読み切っていたのではないでしょうか)
そして、その後も絶妙手が続きます。
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歩で王を危険地帯に追い込み、狙いすました角打ちで仕留めます。
そして仕上げは「7七銀打でした。
この一手で「藤井七冠の玉にかかっていた詰めろ」が外れます。(将棋用語で「詰めろ逃れの詰めろ」)
※金が2枚あるので、一手の隙を与えてしまうだけで、藤井七冠の玉は簡単に詰んでしまう状況だった。
上記局面で銀を打ち込んだことで、金を打たれても防ぐことができます。
豊島九段を追い詰めるだけでなく、自玉の安全も確保する絶妙手でした。
6筋の歩打ちから狙いすました9筋の角打ちで追い込み、そしてトドメの銀打ち。
この一連の流れを1分将棋が1時間近く続いた状況で決めた藤井聡太七冠の終盤力が際立ちました。
そして、その強さを引き出したのは、間違いなく豊島将之九段。
お互いに意識している事は普段の発言からもわかりますが、その二人が繰り広げた最高峰の戦い。
将棋史に残る名局でした。