名人戦第4局、改めて棋譜を確認すると好手が多く短い手数ながら名局でした。
 今回の記事は、渡辺明名人の敗因となった一手、藤井竜王の勝因となった一手を考察していきます。
【名人戦第4局】
 主催: 毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟
 ※藤井竜王の3勝/渡辺名人の1勝
【第4局で勝敗を分けたのは封じ手前後にあり・・・?AI評価値解説】
 昨日書いた解説記事では「7四歩」の一手を「勝負を決めた一手」として紹介しましたが、
 今回はもう少し前に差が付き始めたキッカケとなった手を解説します。
 第4局は好手が多く、どの一手も素晴らしいものでした。
 その中で、大きな差が付くキッカケとなったのが封じ手の場面。
 このぐらいの差がつきました。
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 その直前の評価値としては+112程度で、ほぼ互角。先手/後手の差を考えると誤差範囲です。
 そして私が「これが渡辺名人の敗着になったのでは?」と考えたのが8八歩打。
 ここで評価値が+262と少し差が開きます。(評価値としては‐150)
 ※参考までに、あくまで目安ですが+300になると「先手有利」と表示されるようになります。
 大体60%弱ぐらいかな、という印象です。
この局面では、他にいくつか選択肢があり、例えば下記のように最善手と次善手は違う手でした。
 8八歩打は3番手の評価。
 考慮していた一手だとは思いますが、その後の展開を考慮して渡辺名人は踏み込む8八歩打を選択したのでしょう。
 この一手だけではありませんが、対局を通じて「後手番で勝つために、積極的に攻める姿勢」を感じる一手でした。
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 そして藤井竜王が約70分の長考で封じ手となった7七桂馬。
 ここで最善手を指せたのが大きかった。ハッキリとリードを作った状態で2日目をスタートできました。
 封じ手前の手までは+112と、ほぼ差がない状況だったのですが、ここから2手進んだだけで
 「+305」と、ギリギリですが先手有利という評価になっています。
評価値が揺れ動きやすい終盤であれば十分に逆転できる範囲内ですが、双方まだ探り合い中盤でこの差は大きい。
 作戦負け、とまではいかないと思いますが、渡辺名人が少し無理をして攻めていた手を、
 藤井竜王が上手く対応して差を広げた状況になりました。
 そこから後は藤井竜王らしい、ミスのない藤井曲線を描く展開に。
 攻められる時間が長く「完勝」という気分にはなれないかもしれませんが、
 最後まで集中力を切らさず、好手連発の名局となりました。
終始攻めていた渡辺名人。1勝3敗となり、防衛するには3連勝するしかありません。
 勝率8割を超える藤井竜王相手に3連勝は相当な困難を伴いますが、まずは先手となる第5局を制して
 「藤井竜王とのタイトル戦で初の2勝目」を目指すことになります。
最年少名人の記録更新なるか。注目の第5局は5月31日、6月1日に行われます。(先手:渡辺名人/後手:藤井竜王)


