棋王戦第3局で渡辺明棋王が勝ち、1勝2敗になりました。
藤井聡太竜王は得意の先手番で負けてしまい、連勝記録が28でストップしています。
【訂正】確認したところ数え間違えていたようで、1つ前の対局で29連勝だったそうです。失礼しました。
※藤井聡太竜王の六冠誕生は第4局以降に持ち越しとなりました。
※棋王戦第4局はこちら
棋王戦第4局のAI評価値速報・形勢判断-藤井聡太竜王vs渡辺明棋王
第48期棋王戦コナミグループ杯
主催: 共同通信社、日本将棋連盟
棋王戦第3局のAI評価値推移グラフ
この1勝はかなり大きいですね。
「藤井聡太の先手番角換わりを破った」意味は、今後のタイトル戦での対局に大きな影響があるでしょう。
第4局は渡辺棋王の先手となりますし、状況次第では2勝2敗のタイに戻す展開も考えられます。
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【初手からの流れ/戦型は?】
藤井竜王は初手「お茶、から飛車先の歩を突き」いつもの居飛車から角換わりに向けて進めます。
渡辺棋王も角換わりを受け止め、真正面からぶつかり合う展開を選びました。
藤井竜王の先手番角換わりを乗り越えないとタイトル防衛はない、と感じているのか
得意戦法と真正面から戦うことを選びました。(渡辺二冠(名人・棋王)の意地ですね)
※これは後々「名人タイトル戦」で藤井竜王が挑戦してきた事を考えているのかもしれませんね。
防衛するためには「先手番の藤井竜王を力勝負で上回る必要がある」と考えていたのかもしれません。
渡辺棋王が(藤井竜王が後手番で指す機会がある)後手番の4筋に飛車が回る戦法を見せると、藤井竜王は序盤から桂馬が中段に跳ねて積極的な攻めを見せました。
序盤から緊迫感のある面白い展開になりました。
途中、藤井竜王の8筋の歩を進める一手で渡辺棋王が1時間を超える長考。
持ち時間が4時間の棋王戦で1時間超えの長考は、かなり悩んだ一手と言えるでしょう。
形勢としてはまだ互角で、中盤での競り合いが続きました。
中盤から終盤にかけて、藤井竜王の僅かな緩手から渡辺棋王に形勢が傾きました。
渡辺棋王はそのまま押し切るかと思われましたが、そこから一進一退の攻防が続きました。
その後、藤井竜王側に詰みがある状況まで追いつめられましたが、そこから粘り一時は逆転する状況に。
しかし、藤井竜王が詰みを逃してしまい、再度の逆転劇。
評価値推移グラフを見ていただくとわかりますが、終盤は二転三転した事がよくわかります。
最後は渡辺棋王が藤井竜王の粘りを振り切り、勝利しました。
最後は秒読みになる熱戦になりましたが、藤井竜王相手に久しぶりの勝利となりました。
感想戦では開口一番、最終局面で「双方に詰みがあった手順」を披露していた事から、
渡辺棋王もツイッターで「正直、勝った気はしないけど、まぁでも負けるよりはいい」と発言していました。
投了前、詰みを逃した場面の後で藤井竜王が頭を抱えていたので、相当ショックだったのでしょう。
秒読み状態だったとしても、藤井竜王が詰みがある状態を逃してしまう場面は観た事がなかったので、
本人がショックを受けるのも分かるような気がします。
観たことが無いような藤井竜王の姿だったので、SNSで「調子が悪いのでは?」「疲れだろうか?」と心配する声を多数見かけました。
ただ、師匠の杉本昌隆八段が「(藤井五冠が)もし勝ってしまうとあまりにも大逆転なので、そういう拾い勝ちというのは藤井竜王には似合わないかなと」
とエールを送っており、これを聞いて「引きずらないようにするための、師匠の優しさかな」と感じています。
(そういった意味でも、師匠の杉本昌隆八段の存在は大きいと思います)
渡辺二冠としては今後、藤井竜王は名人戦にタイトル挑戦者として挑んでくる可能性がありますし、
苦手意識を払拭できると大きいのではないでしょうか。
まだ1勝2敗の状況ですが、第4局は渡辺明棋王の先手番になりますし、流れが変わる可能性も出てきました。
藤井竜王の懸念材料は、やはり重要対局が続く過密日程。
棋王戦→王将戦→棋王戦→王将戦と週末はタイトル戦が続いていますし、そこにA級順位戦のプレーオフの予定があります。
全て負けられない一戦と言える対局が続くため、体力・気力共にここが正念場と言えるでしょう。