観る将向け-将棋AIの評価値を見て楽しむためのマメ知識と覚えておいてほしいこと

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現在の将棋中継に欠かせない将棋AIの評価値。
将棋の形勢判断は段位取得者(初段以上)ぐらいないと難しい。
特にタイトル戦レベルになると、初段以上の方でも「感覚的には先手の方が指しやすく見えるけど・・・(形勢判断はよくわからない)」
という事も多いと思います。
今回の記事では「将棋AIの評価値を見る際のポイント」や「観る将の方に覚えておいてほしいこと」をわかりやすく解説します。

将棋AIの評価値は形勢判断を70%/30%のように、誰が見てもわかりやすいように数値で表現されています。
これは将棋中継にとって革命でした。
ルールがわからない方でもどちらが優勢なのかわかるようになり、
例えば野球やサッカーの点数が見えているのと似たような状況になりました。
これで、「将棋に詳しくない方でも楽しめる土台」が整ったと思います。
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将棋AIと言ってもソフトが違えば傾向が違います。
同じ将棋AIソフトの中でも、「定跡」「詰将棋用のエンジン」等で何パターンかある場合もあり、
1つではありません。
※概ね「将棋AI=人間より強い」、というイメージを持っている方が多いでしょう。

私自身も記事で使う表現ですが、例えば凄い一手が出た場合に「AI超え」と言われることがあります。
(「AI超え」という表現を見かけると将棋AIソフトの開発者の方であれば「いや、超えてないよ」という感想を持つ方もいます)
何をもってAI超えというのか、という点は議論になりやすい話題ですが、私なりの考えをまとめた記事があるので
参考までにそちらをご覧ください。
AI超えの定義とは?将棋AIソフトと観る将の関係性について思うこと

【観る将向けの評価値の動きを見極めるポイント】
将棋中継を観ていて、例えば以下のように評価値が動いたらどう感じるでしょうか。
(先手)50%/(後手)50%⇒70%/30%

このような場合、「先手が良い手を指したから評価値が上がった(%、勝率が上がった)」というよりは、
「後手が悪手/疑問手を指して下がった」という場合がほとんどです。
もう1つは「瞬間的には将棋AIが正しい評価をできなかったが、時間をかけて考えているうちに評価を変えた場合」です。

ここでいくつかポイントがあります。
1つは「評価値が下がった」という事は、将棋AIは上記例で言うと
「先手がAIの考える最善手を指した場合」を前提とした評価値になります。
これを覚えておくだけで少し見方が変わります。

※流れとしては以下のイメージです。
(先手)50%/(後手)50%⇒後手が悪手/疑問手を指す(70%/30%)⇒先手が指す
ここから、先手がAIの考える最善手を指した場合、90%/10%になる、というわけではなく
評価値は大体70%/30%前後のままになります。
※後手が指した局面で「次の一手を先手が最善手を指したという前提の評価値」と覚えておけばいいでしょう。
そこで先手がAI最善手ではない手を指した場合、評価値が下がるようになっています。
評価値が大きく動く一手だった場合、その次の一手でまた大きく変動する事があるのはそのため。
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【AI評価値で判断する際のポイント/覚えておいてほしいこと】
例えば70%/30%の評価値で藤井聡太七冠がリードしていた場合。
藤井七冠が指した一手で評価値が55%/45%になったら「藤井七冠が悪手を指した」「藤井七冠が間違えた」
という感想を持つ方も多いと思います。
AIの評価値は「その局面の形勢判断をする仕組み」なので「流れ」を考慮しません。
その為、人間のような「初手からその局面までの流れや心情」は含まれない。
そして「先の先を読んでいる場合」でも、「AI評価値としてはこの手が最善手」と判断しても、
人間の場合は「いくつか候補がある中で、これが一番指しやすい(自分の得意な形にできる)」という手を指しやすい。
他にも「最終的に自分が勝てる手筋を読んでいるので、途中の手はできるだけ安全な受けの手を選ぶ」という場面があった場合、
AI候補手は「ギリギリだけど攻めれば勝てる」と判断していると、攻撃的な一手を最善手と判定します。
そのため、上記の例だと受けの手を選んだことで「最善手ではないので、評価値が下がる」という状況になります。

人間ならこの手を「悪手」や「疑問手」とは言わないでしょう。
むしろ、「確実に勝ちに行く素晴らしい手」と評価する事が多いはず。
そのため、評価値だけを見て「今のは悪手だ」と判断するのは、プロ棋士の方達としては
「そうじゃないんだよ」と感じる方もいるかもしれません。
このパターン、藤井聡太七冠で見かけるパターンが多いように思います。
というのも、「一気に勝ち切る光速の寄せ」のような攻め筋ではなく、
「確実にジワジワと相手を追い詰めていく」
「相手の攻めを潰していく受けの手」
というのは、評価されにくい場合がある。
特に一気に攻め落とせる手がある場合は、ゆっくりした攻め手や受けの一手は評価値が下がりやすい傾向がある。
それを覚えておくだけでも、評価値に対する印象が変わるかもしれませんので、
是非覚えておいてください。

※観る将向けの解説記事
観る将向け-なぜ99%の状態から奇跡の逆転劇が起こるのか?将棋AI評価値マメ知識

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