王座戦第1局の勝負手を徹底解説!
 藤井聡太七冠が負けた理由と永瀬拓矢王座が勝利を手繰り寄せた勝負手を解説します。
71期:王座戦第1局:8月31日(木)
 主催: 日本経済新聞社、日本将棋連盟
【AI評価値・形勢判断解説】(先手)藤井聡太竜王・名人vs(後手)永瀬拓矢王座
 勝敗を分けた永瀬王座の勝負手がこちら。
 流れが悪い状況の中、攻め合いに転じた「2六香」が勝利を手繰り寄せた一手になりました。
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 この勝負手に対して藤井七冠が返した一手は同飛車と打たれた香車を取る一手でした。
 AI評価値としては藤井七冠側に傾いていた状況から、一気に互角~永瀬王座側に傾いた局面。
 ここで一気に流れが変わり、その後は最後まで藤井七冠が厳しい状況で戦いを強いられます。
上記局面でAI候補手は何を示していたのでしょうか。
 少し長めに検討させてみると、将棋AIソフトは以下の手を候補手として挙げていました。
 藤井七冠が指した一手の同飛車(打たれた香車を取る)は、永瀬王座の罠だったようです。
 ここでは「3三桂成り」か「3三と」と相手玉を一気に攻めていく手が最善手・次善手でした。
 この手を指しにくかった理由としては、相手飛車の横利きがあって一気に攻め落とせる状況ではないこと、
 王手をした後に飛車を逃がす(または香車を取る)なら、今取っても同じ。
 そう考えたのかもしれません。
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 対局後、将棋AIソフトも活用して自分で局面を並べて確認してみたのですが、
 同じ香車を取るなら、以下の流れがベストだったようです。
 上記局面から・・・
 3三歩成り⇒同桂⇒同桂成り(3三)⇒同玉⇒4三歩成り⇒2二玉⇒3四桂打⇒1二玉(下記局面)
 この状況まで進んでから、先程の2六にいる香車を取っておけば永瀬王座が苦しくなります。
 永瀬王座が攻める一手であれば1五香と香車が走って、玉頭からも攻められる。
 逃げ道がないため、駒が入れば一気に攻め切れる状況になります。
 (1四桂馬と飛車取りで永瀬王座が粘る手もありますが、ジリ貧になりそうです)
永瀬王座としては、悪いペースの時に諦めずに放った勝負手が勝利に繋がりました。
 藤井七冠としては、永瀬王座の勝負手に対して形勢判断を読み切れなかったところがあったのでしょう。
 ただ、タイトル戦で一度負けた後の藤井七冠は、より強くなって帰ってきます。
 第2局は永瀬王座が先手ですが、そう簡単に連勝スタートはできないでしょう。
 逆に先手番で順調に勝てれば連勝で、一気に藤井七冠を追い込むことができます。
 注目の第2局は9月12日に行われます。


