なぜ藤井聡太は負けたのか?なぜ羽生善治は勝てたのか?王将戦第4局を評価値分析

角換わり腰掛け銀 王将戦
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ALSOK杯王将戦第4局は羽生善治九段が快勝で2勝2敗のタイに戻しました。
藤井聡太王将にしては珍しく読み抜けがあったのか、封じ手からの流れは良いところなく完敗です。
【王将戦】主催:毎日新聞、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟

まず、藤井聡太五冠のファンの方が心配しているであろう事としては、
「スランプなんだろうか」という事。
羽生善治九段との王将戦では後手番で2敗。先日のA級順位戦では永瀬拓矢王座に後手番で負けました。
基本的に先手有利と言われる将棋ですが、全体の平均で見ると70%のような勝率ではなく、50%台なんです。
(60%にも満たない)
A級にいる棋士やタイトル戦に絡んでくるようなトップ棋士であれば、先手有利の割合が高くなります。
羽生善治九段は王将戦挑戦者決定リーグ戦で6連勝で勝ち上がってきていますし、好調を維持しているトップ棋士の1人。
その為、藤井聡太五冠とはいえ、トップ棋士相手に後手番で確実に勝つことは難しいことがわかります。
その上で王将戦第4局を振り返っていきます。
【王将戦第4局・評価値/形勢判断推移グラフ】
王将戦第4局・AI評価値・形勢判断速報
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評価値の推移を見るとわかりますが、1日目は互角。
多くのメディアで「羽生善治九段の快勝」と言われていると思いますが、実は藤井聡太五冠側に評価値が触れたタイミングがありました。
(有利、優勢のような状態ではありませんが、総じて定跡に近い形で進めると常にプラス(先手)になる評価値が、
マイナス(後手)側の評価になったという事は、先手の優位を消していた(後手が上手く戦えていた)という事。
1日目は後手の藤井五冠から積極的に仕掛けていきましたが、その辺りまでは良かったと思います。
負けた理由は、やはり封じ手の場面でしょう。
2時間の長考で選んだ一手が敗着に向かう一手となってしまいました。
※対局直後のインタビューでも、封じ手が良くなかった、とコメントしていました。

1日目が終了した後、下記の記事を書きました。
王将戦第4局-封じ手から先はどちらが有利?評価値・形勢判断予想-藤井聡太王将vs羽生善治九段
ここで詳しく書いたように、封じ手の選択肢は実質2つしかなく、王手に対して銀で取るか玉で取るかの2択でした。
銀で取った場合は、評価値がマイナスに(後手有利/藤井五冠が優位)、
玉で取った場合は、評価値がプラスに(先手有利/羽生九段が優位)

私の試した範囲になりますが、水匠で双方最善手を指した状態で進めると、
銀で取っていた場合なら数手先には差が付き始めており、手が進めば進む程に藤井聡太五冠が優勢になる展開でした。
そういった事もあって、上記の記事では藤井聡太五冠が優勢になるのでは?
という視点で記事を書いていました。

藤井聡太五冠はこれで後手番3連敗。先手番の連勝記録があることで目立ちませんが、
トップクラス相手となれば、やはり後手番でも当たり前のように勝つのは難しい、ということでしょう。
ただ、今までは後手番でも相当な勝率で勝ってきました。
少々スランプ気味なのではないか?と心配もあります。
※恐らくは王将戦/棋王戦のタイトル戦やA級順位戦などの重要対局・タイトル就位式などのイベントが続いており、
準備不足の面もあるのかもしれませんね。
後手番での勝利が難しいことがわかっているからこそ、思い切った踏み込みで先手を取ったのだと思いますが、
その後が上手くいきませんでした。
ちょっとしたバランスが崩れているようにも見えます。
ただ、藤井聡太五冠も「先手番の勝率が高いという事は、それだけ後手番で勝てていないということです。そこが課題です」
と話していますし、今までも負けた後に「より強い姿を見せてくれる」ことが何度もありました。
調整能力・修正能力が桁違いに高いのでしょう。
対する羽生善治九段は、次は後手番になります。
後手番なので負けても致し方ないように思えますが、それでも負けると2勝3敗で王手をかけられる(カド番)ことになってしまうため、
ここで勝負を掛けてくるはず。
いくつか可能性はありますが、藤井聡太五冠が角換わりに誘導しようとした形から、
羽生善治九段が横歩取りに進めようとするのではないかと予想しています。
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