棋王戦第2局は藤井聡太竜王が渡辺明棋王に勝ち、これで2勝0敗。
棋王タイトル奪取に王手となり、六冠獲得が見えてきました。
また、後手番の連敗が3で止まったことで、平行して行われている羽生善治九段との王将戦の防衛に向けても、
明るい材料になったのではないでしょうか。
※棋王戦第4局はこちら
棋王戦第4局のAI評価値速報・形勢判断-藤井聡太竜王vs渡辺明棋王
※棋王戦第2局のAI評価値・形勢判断
今年に入って一番の熱戦・名局だったかもしれません。
多少の疑問手はありましたが、最後まで緊張感の続く熱戦でした。
終盤まで互角の状態が続き、勝った藤井竜王もギリギリまで勝利を確信できなかったのではないかと思います。
対局後、2人の熱のこもった感想戦が長く続き、緊張感から解放された二人の表情が印象的でした。
筆者が「ここが分岐点だったな(結果的に敗着になった)」と感じたのは中盤で藤井竜王が飛車を敵陣に打ち込んだ直後の一手。
渡辺明棋王にはいくつか選択肢がありましたが、金を玉に近づけ守った一手が敗着だったように思えます。
※水匠はこの1手で「-316」と一気に評価値を下げている(ABEMAの評価値でも10%程度差が開いたでしょうか)
藤井竜王の飛車が龍になり、敵陣奥深くを縦横無尽に駆け巡る展開になった。
※また、100手を超えてからの2筋への角打ち(2枚角)も強烈でした。
最終的には投了後も含めて30手詰め前後となった「相手玉を仕留める直接要因に繋がる一手」でした。
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渡辺棋王は戦型を角換わりに誘導。双方角換わり腰掛銀の形になりました。
午前中はスムーズに進行していましたが、研究範囲から外れるのが早かったのか、
渡辺棋王が午前中に長考。
午後、再開の一手で少し藤井竜王に評価値が触れますが、次の一手で再度互角に。
その後、少しずつ藤井竜王に評価値が振れていきますが、いつもの藤井曲線とは行かず
渡辺明棋王が耐えて互角近くを維持する状態が続きました。
評価値の推移を見るとわかりますが、100手直前までは互角範囲内。
勝ったとはいえ、藤井竜王もかなり疲れた表情が激戦を物語っていました。
渡辺明棋王は対局前のインタビューで、この対局に掛ける意気込みを語っていましたが、
結果的に勝利に結びつかず、悔しい思いをしているでしょう。
結果的に「渡辺明は藤井聡太に勝てない」というようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、
1局1局を観ていると、ほとんどが接戦でギリギリの勝負な事がわかります。
【2人の直接対決】
藤井聡太竜王の14勝2敗
※タイトル戦に限定すると藤井竜王は渡辺明二冠(名人・棋王)に1敗しかしていない。
2人のインタビュー等を聞いていると、渡辺明二冠側に「苦手意識」というよりは「相性」のようなものがあるように思えます。
藤井聡太竜王はどんな相手でも、相手の得意戦法を受けて立つタイプ。
渡辺明名人も、力勝負を挑むことが多い。
双方研究も深く、互角のまま推移する事が多いのですが、終盤になった時に藤井聡太竜王の終盤力が上回り
ギリギリの差で藤井竜王が上回る事が多いのでしょう。
例えば羽生善治九段は藤井竜王先手の場合、王将戦では「力勝負」というよりは「相手が不慣れな形に持ち込む」
事を徹底していたように思えます。
渡辺明名人は深い研究で知られており、基本的には「実力差・研究の差で相手に勝つ」タイプ。
まだトップクラスで戦っている名人位ですから、自分から戦い方を変えるのは難しいのかもしれません。
(仮に藤井竜王が名人位も獲得して渡辺明二冠が無冠になった場合、その時が戦い方を変えるキッカケになるのかもしれませんね)