本日はALSOK杯王将戦第3局は藤井聡太王将が勝って2勝1敗になりました。
3局目の2日目は藤井王将の圧勝・完勝と言っていい内容で、じわじわと差が開いていき、
AI評価値は「藤井曲線」と呼ばれる推移をたどりました。
「一度負けた後の藤井王将は強い」ですね。
一度負けた後、次の対局までに相当な研究をしてくるのでしょう。
何としても勝つ、という気迫が伝わってくる内容でした。
今年度、これで先手番に限ると25勝1敗で22連勝。先手番の勝率は0.950を超える驚異的な数値。
まだ1敗しかしていません。
【王将戦】主催:毎日新聞、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟
藤井聡太王将vs羽生善治九段
第3局の詳しい流れは、下記の記事で解説しています。
王将戦第3局2日目の評価値・形勢判断速報-藤井王将vs羽生九段
【王将戦第3局・評価値/形勢判断推移】
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シリーズ開幕前から注目を集めていた将棋界のレジェンド羽生善治九段との王将戦。
戦前の予想では藤井聡太王将が圧勝するのでは?
という予想をしていた方も多く見かけましたが、ここまで2勝1敗。
各対局で接戦が繰り広げられており、ここまで先手番が勝利する展開でブレイクはありません。
(そういった意味でも、第4局の勝敗が重要になります)
3局を通じて感じるのは、羽生善治九段の徹底した戦略です。
第1局は後手番で一手損角換わり。藤井王将の経験が少ない形に持ち込みます。
第2局は先手で相掛かりの前例の少ない形に誘導。
第3局は後手番で飛車を振る素振りを見せながら雁木模様に構えました。
今のところ、藤井王将が先手番で今年度ずっと採用している角換わりで双方正面からぶつかり合う展開になっていません。
藤井聡太王将は「相手の戦略は全て受けて立つ(その上で上回る)」タイプなので、相手に合わせた戦い方が多くなります。
ここ数年のタイトル戦では渡辺明二冠(名人・棋王)や豊島将之九段・広瀬章人八段・永瀬拓矢王座達と戦いましたが、
概ね「お互い得意とする戦型でガチンコ勝負」(相手の読み・強さを上回るための戦い方)です。
力と力のぶつかり合いで上回ってきた藤井王将に対して、羽生善治九段は正面衝突を控えて、
なるべく藤井王将の得意とする形に持ち込ませないように工夫しているのでしょう。
「ベテランの味」というか、用意周到な戦略に感服します。
年齢が上がってくるとどうしても棋力(気力)が落ちてきやすい、と言われていますが、
それを経験で補えている良い事例になるのではないでしょうか。
将棋の面白いところは、「(年齢と共に力が落ちてきたとしても)経験で補える要素がある」という点です。
工夫次第で、まだ強くなれる。
私自身もそれは感じており、若い頃に培ってきた「詰将棋」「次の一手」「定跡」「実戦経験」に加えて、
近年流行したAI将棋ソフトを序盤・中盤研究に活用し、苦手とする戦型に対する対策を学んだり、
今までにないような新手を考えることに繋がりました。
羽生九段の戦い方を見ていると、同じような要素を感じます。
渡辺明二冠(名人・棋王)や豊島将之九段・永瀬卓也王座はガチンコ勝負型。
広瀬章人八段は少し変化を加えてきましたが、概ねガチンコ勝負型と言っていいでしょう。
年齢に応じて多少戦い方が変わってくると思いますが、今シリーズの羽生善治九段の戦い方は、
ベテラン棋士達にとって「戦い方の手本(希望)」になるかもしれません。