将棋の名人戦第3局、渡辺名人が勝負を決めたAI超えの一手を紹介します。
藤井竜王の読みを上回る起死回生の一手で、逆転勝ちを収めました。
今回の記事では、渡辺名人が逆転を決めた一手を詳しく解説します。
【名人戦第3局】
対局日程:5月13日・14日
主催: 毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟
協賛: 大和証券グループ
※藤井竜王の2勝/渡辺名人の1勝
【第3局のAI評価値解説】(第3局は渡辺名人が先手/藤井竜王が後手)
評価値の推移を見ていただくとわかるように、中盤までは藤井竜王がリードしていて、
「これは3連勝で最年少名人に王手ではないか」という状況でした。
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藤井竜王は細い攻めを繋いでいけそうな局面で、長考から一気に攻め込みます。
角を切って仕留めに行き、「これは藤井竜王の勝ちだな」と多くの方が予想していたのではないでしょうか。
筆者もそう思いながら観戦していました。
ここで渡辺名人に起死回生の一手が出ます。それが「5九歩(打)」の一手。
銀をタダで捨てることになり、恐らくこの一手を藤井竜王が読めていなかったのではないでしょうか。
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この一手があるからこそ、その前に藤井竜王が2七歩と飛車を吊り上げる一手で
AIは評価値を大きく下げてしまったのでしょう。
(この2七歩(打)、人間目線だと良い手に見えます。渡辺名人の飛車を吊り上げて、自分の飛車が成る一手が銀取り&玉攻めにも近いので)
実際、この5九歩(打)の局面でAIに深く検討させると以下の結果でした。
最善手の5九歩(打)だけがプラス評価値で、後は全て後手(藤井竜王)が優勢になる。
という結果に。
藤井竜王にこの一手が見えていなかった事で、2七歩と飛車を吊り上げる一手に繋がったのでしょう。
(この前後に長考している為、藤井竜王も途中で気付いた可能性が高そうです)
この勝負を決めた起死回生の一手、AI評価値も揺れ動きます。
深く読ませないと正しい評価ができない難しい一手だったようで、
以下のように「5秒」と「3分」で大きく結果が変わりました。
※5秒(-256の評価)
※3分(+208の評価)
当初は「リードは保っているが、評価値は下がる」という結果に。
しかし、長い時間をかけて検討させると、「プラス評価」に変わりました。
短い時間のAIでは、この一手が正しく評価できなかった事がわかる難しい一手でした。
藤井竜王も途中で気付いて後悔したのではないかと予想しますが、藤井竜王でもすぐに気づけないぐらい難しい一手と言えます。
渡辺名人はこの一手でリードを確保し、ここから後は余裕のある残り時間を有効に使ってミスなく勝ち切りました。
苦手意識を払拭する一勝となるかどうか。
第2局で負けた後、非常に落ち込んでいる様子が伺えたので、今回の一勝で立て直せそうな雰囲気がありますね。
次の一局で渡辺名人が2勝2敗のタイに戻すか、藤井竜王が先手番を活かして3勝1敗と突き放すか。
注目の第4局は5月21日、5月22日に行われます。