王将戦第2局の勝因・勝負所を解説-なぜ羽生善治九段は藤井聡太王将に勝てたのか

将棋ニュース速報_タイトル戦 王将戦
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ALSOK杯王将戦第2局は羽生善治九段が勝って1勝1敗のタイに戻しました。
藤井聡太王将も粘りましたが及ばず。羽生九段の深い研究が光った1局でした。
【王将戦】主催:毎日新聞、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟

【初手から投了までの評価値・形勢判断推移グラフ】(先手:羽生九段、後手:藤井王将)
王将戦の評価値-将棋ニュース速報
評価値・形勢判断のグラフを見ていると、2日目のお昼ぐらいまでは双方にチャンスがあったようです。
「藤井王将が厳しいかな」と感じる局面からは、怒涛の勝負手を連発で藤井王将が攻勢に出ました。
これは、「受けていてもジリ貧で、勝つには攻めて活路を見出すしかない」という決断をしたのでしょう。
(多少、「無理攻めかな?」と思える攻め筋でしたが、さすが藤井王将。最後の最後まで「一手でも間違えれば即詰み」
の状態をキープしていました。羽生九段も相当なプレシャーだったと思います)
羽生九段が藤井王将に勝てた最大の理由は、タイムマネージメントだったかもしれません。
怒涛の連続王手に入る前から、強烈な攻めを繰り出していた藤井王将。
もし時間に余裕のない状況でれば、羽生九段も最後まで逃げ切ることはできなかったのではないでしょうか。

【勝負所を解説-勝敗の分かれ目は?】
上記、持ち時間・時間消化の面で藤井王将にダメージを与えたのは、話題になっていた8筋に打ち込んだ金。
序盤・中盤で長考する事も多い藤井王将ですが、最近は残り時間が早い段階でなくなってしまう状況は減っていました。
意識して時間を残すようにしていたのではないかと思いますが、第2局は早い段階から残り時間に差がついてしまい、
それが最終的に響いたように思えます。

【筆者の感じた勝負所】
・羽生九段の指した「飛車取りで跳ねた桂馬」
→8筋で飛車交換をした時点では、若干藤井王将が指しやすかったでしょうか。
羽生九段としては1筋に跳ねた桂馬に代わる手がなさそうですが、逆側の桂馬が跳ねる手もあったでしょうか。
・羽生九段の指した「8筋に打ち込んだ金」
→これは1日目に多くの方が驚いた一手。AI評価値・形勢判断としても、このタイミングから
先手の羽生九段に傾き始めていました。
・羽生九段が5筋に銀を打ち込み馬銀取り
→ここは香車が良かったかもしれませんね。藤井王将としてはまだ十分戦えていた局面でした。
・藤井王将が7筋に打ち込んだ銀
→AIは自陣の飛車打ちで受けの一手を最善手と表示していましたが、仮に最善手としてもその後は
ジリ貧になりそうだと感じていたのかもしれません。
攻め合いに持ち込み、活路を見出した藤井王将の一手は棋風としても「行くだろうな」
と思いながら観ていました。
・羽生九段が指した4筋の歩を上げて玉の逃げ道を確保した手
→残り時間が同じぐらいであれば違ったと思いますが、残り時間に余裕のあった羽生九段は冷静でした。
この1手が勝敗を決めたかもしれません。
・藤井王将の香車打ち
→最後のチャンスとしては、ここだったでしょうか。怒涛の連続王手で羽生九段を攻めていましたが、
結果的に変わらなかったとしても、香車を打つより3筋に玉を逃がさないため3筋に銀を打っておいた方が良かったかもしれません。

結果的には羽生九段が逃げ切り1勝1敗のタイに戻しました。
対局後のコメントで「ほっとした」と話していましたが、2局目で負けるとストレート負けがチラつき始めるので、
1勝できて安心したのではないでしょうか。
(それまでの対局が1勝8敗と大きく負け越していた)
羽生九段としては、この1勝で気持ちが楽になったと思います。
今まで以上にリラックスして対局に臨めるのではないでしょうか。
第3局は藤井王将が先手です。
羽生九段はここでブレイクしたい。今年度好調の要因となっている横歩取りを出すかもしれませんね。

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